離婚事件の解決事例

離婚訴訟提起により、短い別居期間で和解による離婚が成立した事例

事案の概要

 離婚希望の夫から、ご相談を受けました。
 お客様ご夫婦の間には子供がおらず、お客様は子供を希望していたのですが、妻が積極的ではなく、性交渉も拒否されるという状態になってしまいました。その後、お客様は別の女性と交際するようになり、当該女性と再婚して、子供を作ることを希望するようになりました。
 お客様から妻に対して、離婚したい旨伝えましたが、妻からは離婚を拒否され、むしろ夫婦関係を修復したいと言われるようになり、困って、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

結論

 当事務所にてお話を伺ったところ、妻に修復の意思があるとわかっても、お客様の離婚意思は固いことが分かったので、別居をしていただき、当事務所が夫の代理人として、対応することになりました。その後、当事務所が代理人として離婚調停の申し立てを行いましたが、妻の合意は得られず、調停は不成立で終了となりました。お客様とご相談の上、直後に離婚訴訟を提起したところ、手続きの中で、裁判官からの説明などもなされ、妻も離婚に合意するに至り、和解により離婚が成立しました。

 本件では、お客様は、いわゆる「有責配偶者」に該当しうる状況でした。夫婦の同居中に不貞行為などを行い、婚姻関係を破綻させたことに責任のある配偶者は「有責配偶者」といわれています。有責配偶者からの離婚請求は、判例上、認められる条件が限られています。
 本件でも、妻が離婚を拒否し続けた場合、訴訟では夫からの離婚請求は認容されず、認容してもらうために、長期の別居期間が必要となる可能性も考えられました。そのため、離婚調停が不成立にて終了した後、すぐには訴訟提起せずに一定期間別居期間を置いて改めて訴訟提起をするという進め方も検討しました。

 しかし、お客様は子供が欲しいということもあり、早期の離婚を希望していました。他方で、これまでの妻の対応、妻が経済的に自立していることなどから、妻は経済的な不安等から離婚を拒否しているのではなく、気持ちの問題が大きく、時間が経過すれば夫の気持ちが変わり、夫婦関係の修復が望めるという期待を持っている可能性が高い状況でした。
 そこで、お客様と相談の上、判決がどうなるかわからないが、妻に対して離婚意思が固いということを示すためにも、現段階で離婚訴訟を提起することにしました。

 訴訟手続きの中では、当事務所が夫の代理人として主張立証を行いながら、裁判官からも夫の離婚意思が固いことを伝えてもらいました。その結果、妻は夫との修復は不可能と考えるに至り、離婚につき合意しました。判決前に和解による離婚成立となりました。

 本件のように、元々夫婦仲が悪いというような状況ではなかったにもかかわらず、ちょっとした行き違いで片方が離婚意思を固めてしまうケースは珍しくありません。こうなってしまうと基本的に翻意することはないのですが、他方配偶者にしてみると、「仲は悪くなかったのになぜ?」という気持ちもあり現実を受け入れられない、夫が本当に離婚したいとは思えないという状況になりがちです。その場合は、まずは、配偶者に対して自分の離婚意思が固いことを伝える努力をする必要があります。これをせずに離婚条件の提案をするなどしてもポイントがずれているので話が進みません。

 離婚対応は、離婚を希望するお客様の気持ちももちろん大事なのですが、相手方配偶者が何を思い、何を希望しているのかを正確につかむことも重要です。それによって、すべきことが違ってくるためです。ご自身で対応しようとするとこの点が抜け落ちてしまっている方も多いです。一度は第三者である専門家に客観的な意見をもらうことも重要と考えます。