コラム

嫡出推定規定の見直し

 令和4年12月に民法の改正が成立し、同月16日に公布されました。改正法は、公布日から1年6月以内に施行されます(懲戒権に関する改正は令和4年12月16日から施行されています)。

 今回の改正前、婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定される規定がありました(改正前772条1項)。そして、婚姻成立の日から200日が経過した後、または離婚成立の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されました(改正前772条2項)。
また、女性は離婚して100日が経過した後でなければ、再婚することができませんでした(733条1項。ただし、妊娠していなかったり、子を出産した後であれば100日以内でも再婚することはできました(733条2項))
 これらの規定により、子の父親が誰なのか、推定が重複しない仕組みになっています。離婚成立後100日経過するまでは再婚できず、この間に生まれた子は前夫の子と推定されます。再婚後に生まれた子は、離婚から300日以内に生まれた子は前夫の子と推定され、再婚から200日経過した後に生まれた子は再婚相手の子と推定されます。

 しかし、前夫以外の者との間の子を出産した女性が、この仕組みによって、その子が前夫の子と扱われることを避けるために出生届を提出しないことがあり、無戸籍者が生まれる原因となっているとの指摘がありました。嫡出推定を争うためには嫡出否認の手続きを行う必要がありますが、これは夫のみが申し立てることを認められており、母や子から嫡出否認の手続きを取ることはできず、また、嫡出否認の手続きは、夫が子の出生を知ったときから1年以内に行わなければならないという期間制限もありました。母や子が父子関係を争う別の方法もありますが、判例上、ハードルがありました。

 そこで、法改正により、離婚等の日から300日以内に生まれた子であっても、その間に母が再婚をしたときは、再婚後の夫の子と推定する(民法772条等関係)こととされ、また嫡出推定規定の見直しにより、父性推定の重複がなくなるため、女性の再婚禁止期間を廃止することとなりました。

 否認権者は拡大され、夫、子又は母は、嫡出否認の訴えを提起することができることになりました。 再婚後の夫の子と推定される場合、前夫も嫡出否認の訴えを提起することができます。また、嫡出否認の訴えの出訴期間を、原則として3年間に伸長されました。