コラム

養育費 裁判例

養育費の減額にはどの程度の収入減少が必要か

弁護士 長島功

 一度決まった養育費の金額も、その後の事情によって変更されることがあり、合意当時に予期できなかった事情の変更があれば、養育費は修正される可能性があります。
 典型的には収入の減少を理由とした養育費の減額が挙げられます。

 では、実際上どの程度収入の減少で、養育費の減額は認められているのでしょうか?
 裁判例を見ますと、婚姻費用に関するものですが、東京高裁平成26年11月26日決定は、約12.5%の減少率について「それほど大幅な減少とは認められない」と述べておりますが、「婚姻費用・養育費の算定」-裁判官の視点にみる算定の実務(著松本哲泓)によれば、「2割程度減少した場合は、事情変更を認める例が多いと思われる」とされています。
 一方、大阪高裁平成22年3月3日決定は、3割減少したケースで変更を否定しています。
 同ケースも婚姻費用に関するものですが、義務者が歯科医師であり、非常勤専門医として稼働していたところ、大学の研究生になったことから収入が減少したというものです。
 ただ、同決定は年齢・資格・経験等から従前と同程度の収入を得る稼働能力があるとして、減額を認めませんでした。
 ですので、収入減少だけで養育費の減額が判断される訳ではないのですが、減額のためにはせめて2割程の収入減少が必要になると思われます。お悩みの方は一度専門家にご相談されてみてください。