コラム

面会交流

監護親の再婚と宿泊付き面会交流

弁護士 長島功

 面会交流は、一度合意がなされたとしてもその後の事情の変化により子の利益を優先し、その内容が修正されるべき場合があります。典型的には、監護親が再婚し、さらには再婚相手と未成年者が養子縁組までしたようなケースでは、未成年者の新しい環境への影響を考慮せざるを得ません。
 そこで、原審では認められていた宿泊付の面会交流が、抗告審で否定された事例についてご紹介したいと思います。

1 事案の概要
 未成年者ら(小学生と保育園生)の親権者を父親と定めて離婚した後、当初は月に1度の割合で、母親との宿泊付きの面会交流が実施されていました。
 ただ、その後父親は面会交流時の母親の発言を約束違反だと主張し、面会交流を拒否するようになったことから、母親より調停の申立てがなされ、審判に移行しました。
 原審では、月1回の面会交流と年2回の宿泊付きの面会交流が認められたことから、父親は原審を不服として即時抗告がなされました。なお、原審の段階で父親には再婚予定の女性(以下、単に「女性」)がいましたが、原審判の後、父親は女性と再婚し、女性と子どもらとは養子縁組がなされています。

2 抗告審の判断(大阪高決平成18年2月3日)
 面接交渉は、子の健全育成に有益なものであるから、子の福祉を害するおそれがある場合を除いて原則として認められるべきであるとした上で、父親と女性はその共同親権の下で未成年者らとの新しい家族関係を確立する途上にあるから、生活感覚やしつけの違いから、未成年者らの心情や精神的安定に悪影響を及ぼす事態はできるだけ回避されなければならないとし、宿泊付きの面接交渉は、そのような危惧が否定できないものというべきとして、宿泊付きの面接交渉は認めない判断をしました。

 ただ、抗告審も、あくまで「現段階においては避けるのが相当」としているだけで、日帰りによる面接交渉が円滑に実施され、未成年者らに新しい生活習慣が身に付き、上記おそれが払拭された時点で、改めて宿泊付きの面接交渉の実施の可否が検討されるべきとも述べています。

 宿泊付きの面会交流は、ゆったりとした気持ちで落ち着いて非監護親との交流が図れるもので、日帰りでの面会交流にはない大きな効果が期待できるものです。
 ただ一方で、抗告審が述べているような懸念が宿泊付きにはありえ、特に新しい生活環境が始まったばかりの時期は、未成年者に負担や混乱が生じないよう慎重な対応が必要な場合があるといえます。