コラム

離婚訴訟 裁判例 有責配偶者

有責配偶者からの離婚請求(東京高裁平成14年 6月26日判決)

弁護士 幡野真弥

 東京高裁平成14年6月26日判決をご紹介します。

 事案の概要は、以下のとおりです。
・夫(昭和25年生)と妻(昭和26年生)は、昭和49年、婚姻の届出をした。
・両名の間には長男(昭和49年生)と二男(昭和54年日生)がいる。
・夫婦は会話の少ない夫婦であった上、結婚当初から夫が帰宅しない日が多かったことなどから、必ずしも円満な夫婦関係ではなかった。
・夫は、妻がが外国人男性と親密な関係にあるのではないかとの疑念を抱くようになり、更に会話の少ない夫婦となり、必要不可欠なこと以外は口をきかないという状態になっていた。
・夫は、ある女性と知り合って親密な関係となり、平成8年3月ころ自宅を出て別にアパートを借りて別居し、そこに女性が時々訪ねて来るという生活となった。
・夫は、平成9年3月ころから、女性と同棲生活をするに至り、そのころから週1回の自宅への帰宅もしなくなった。
・平成11年7月ころ、夫は、妻の代理人弁護士から呼出を受け、妻に対し離婚の条件を提示したが折り合いは付かなかった。
・夫は、平成12年1月25日、離婚を求める調停を東京家庭裁判所に申し立てたが、同調停は同年5月18日不成立により終了した。
・妻は、英語の教師として勤務し、平成12年ころ手取りで月額35万円くらいの収入を得ていた。
・長男は大学を卒業して同年4月に就職し、二男も平成14年3月大学を卒業した。
・夫は、離婚に伴う給付として妻に対し自宅建物を分与し、残っている住宅ローンも完済まで支払い続けるとの意向を表明している。 

東京高裁は、以下のように判断しました。

「控訴人と被控訴人とは、もともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であったところ、被控訴人と外国人男性との不倫疑惑で夫婦の溝が大きく広がり、更に控訴人がEと婚姻外の男女関係を続けた中で互いに夫婦としての愛情を喪失して別居に至ったもので、別居後既に6年を超えているところ、その間夫婦関係の改善は全くみられず控訴人の離婚意思は極めて強固であることが明らかであって、控訴人と被控訴人の婚姻関係は完全に破綻し、今後話合い等によってこれを修復していくことは期待できないものと認められる。
 なお、被控訴人が外国人男性と不貞行為があったかについては本件全証拠によるもこれを認めるに足りないが、上記認定の限りにおいても、控訴人が被控訴人において外国人男性と親密な関係にあるのではないかとの疑念を抱いたことは無理からぬことであり、被控訴人の外国人男性との交遊は控訴人との夫婦関係の悪化を促進させる要因となったものと認められる。」
 「控訴人の本件離婚請求が有責配偶者からのものであって許されないものであるか否かについて検討すると、前記認定の事実によれば控訴人は有責配偶者であると認められるが、別居期間は平成8年3月から既に6年以上経過しているところ、控訴人ら夫婦はもともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦であって、別居前も被控訴人と外国人男性との交遊に夫である控訴人の側からみて前記のような疑念を抱かせるものがあり、そのころから夫婦間の溝が大きく広がっていたこと、二子とも成人して大学を卒業しているなど夫婦間に未成熟子がいないこと、被控訴人は津田英語会に勤務して相当の収入を得ているところ、控訴人は離婚に伴う給付として被控訴人に現在同人が居住している自宅建物を分与し同建物について残っているローンも完済するまで支払続けるとの意向を表明していることなどの事情に鑑みると、その請求が信義誠実の原則に反するとはいえない。」