コラム

離婚訴訟 裁判例 有責配偶者

有責配偶者からの離婚請求(最高裁昭和63年12月8日判決)

弁護士 幡野真弥

 有責配偶者からの離婚請求を認めた最高裁昭和63年12月8日判決をご紹介します。

(1) 夫(昭和25年生)と妻(昭和23年生)とは、昭和47年1月頃知り合い、肉体関係を伴う交際を続け、昭和50年1月14、5日頃から東京のアパートで同棲するに至り、外国航路の船のコツクとして働いていた夫が同年3月頃乗船して同年12月末頃下船した後の翌51年1月21日結婚式を挙げ、同月23日婚姻届出をした。

(2) 妻は、夫が昭和51年5月の連休明けに再び乗船していつたところ、同年夏頃、訴外加男性と知り合い、同年9月頃からは肉体関係を持つようになり、同年11月4、5日頃に下船した夫に対し別れたいと告げ、同月12日にはアパートを飛び出して姿を隠し、別にアパートを借りて男性と同棲生活を始めた。

(3)上告人と被上告人の間に子はいない。

 裁判所は、このような事実関係の下においては、「被上告人(妻)は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は、原審の口頭弁論終結時(昭和62年1月28日)までで約10年3か月であつて、双方の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、しかも、両者の間には子がなく、上告人が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が存するとはいえない」と判断し、有責配偶者である妻からの離婚請求を認めました。