コラム

養育費

養育費と消滅時効(改正民法による場合)

弁護士 長島功

 債権は権利を行使せずに放置をしていると、時効により消滅してしまう可能性があります。
 そこで今回は、養育費の時効はどうなるのかについて解説していこうと思います。
 改正前の民法では、養育費のような定期給付債権については、特別の規定がありました。しかし、令和2年4月1日から施行された民法では、この特別の規定は廃止され、養育費についても債権全般の消滅時効が適用されます(民法166条1項)。
 その結果、権利を行使できることを知った時から5年で時効により消滅します。
 ただ、民法169条1項では、次のような定めがあります。
 「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年とする」 
 そのため、養育費が例えば、調停の中で成立しているような場合、その調停調書は家事事件手続法の定めによって、「執行力のある債務名義と同一の効力」を有するとされているため(同法268条1項、39条、75条)、消滅時効期間は10年になりそうです。
 しかし、民法169条2項では、
 「前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない」
 とされていますので、将来の支払を定めた養育費については、調停調書で合意をしたとしても5年で時効消滅します。
 なお、執行認諾文言付の公正証書(以下、単に「公正証書」)で取り決めた場合はどうなるのかですが、公正証書は確かに執行力はあるのですが、既判力というものがない関係で、「確定判決と同一の効力を有するもの」(民法169条1項)には当たらないとされているため、やはり権利を行使できることを知った時から5年で時効消滅します。