コラム

裁判例 婚姻費用分担金

別居時の財産の持出しについて

弁護士 幡野真弥

 夫婦の関係性が悪化し、離婚について協議を続けていく中で、配偶者のどちらか一方が家を出て別居することになった場合、別居に際して、財産を持ち出すことがあります。
 典型的には、一方の配偶者が、他方の配偶者名義の預金口座から、自身の名義の口座に預金を移し、その後に別居するというケースです。

 別居後は、婚姻費用の請求をすることとなりますが、別居時の預金の持出しをもって、婚姻費用は支払済みであるなどの反論がなされることがあります。

 この問題については、原則として、別居時の財産の持出しは、財産分与の算定において考慮するべき事由であって、婚姻費用の算定にあたって考慮するべきではないとされています。

 ただし、ごく例外的に、婚姻費用の負担を認めることが財産を持ち出された配偶者にとって過酷な結果となるような場合は、婚姻費用の分担義務を負わないなど、婚姻費用の算定において一定の考慮がなされることもあります(札幌高決平成16年5月31日)。