コラム

養育費 婚姻費用分担金

婚姻費用分担金と養育費②

弁護士 小島梓

 今回は、「婚姻費用分担金と養育費①」でご説明した婚姻費用分担金と養育費の違いを前提として、離婚を検討する際に考えていただきたいことや注意いただきたいことなどをご説明します。

 離婚検討時に、婚姻費用と養育費の絡みで主に考えていただきたいのは、主に各々の生活設計です。

 婚姻中に支払われる婚姻費用分担金に比して、離婚後に支払われる養育費の方が金額が低額になるのが通常です。その大きな理由は、養育費には監護親である(元)配偶者の生活費が含まれず、子の生活費のみとなるためです(「婚姻費用分担金と養育費①」もご参照ください)。

 そのため、当事務所では、離婚を検討する際には、別居後の婚姻費用分担金額のみならず、離婚後に支払われることになる養育費の金額も把握した上で、各々の生活設計を立てることをお勧めしています。
 支払いを受ける側が妻、支払う側が夫ということを前提として、それぞれ具体的に考えてみたいと思います。

<例1:妻>
 例えば、専業主婦の方が子供を連れて離婚をしようと考えた場合、多くの方は経済的なことを考えるとご自身も働き始める必要があります。そこで、就職はいつできそうか、別居後の婚姻費用額を考えたときに、ご自身でどの程度稼げれば生活していけるか、さらに、ご自身の収入がどの程度まで上がれば、養育費程度の金額になっても生活していけるのか、この辺りのことを事前に考えてみるという流れです。

<例2:夫>
 夫が一人自宅を出て、別居して、その後離婚したいと考えた場合、生活世帯が二つになるため、別居すると同居中よりお金がかかるというケースも珍しくありません。
 他方、夫側にしてみると、婚姻費用額よりも養育費の方が低額になる、すなわち、金銭面では離婚した方が得になるという面があるのも事実です。
 この辺りを考慮して、生活設計を立て、別居後婚姻費用を払える収支とするにはどうしたらいいのか、養育費に切り替わったらどの程度経済的に楽になるのかということを早い段階で考えておくという流れになります。夫側にとっては、これが離婚条件を考える際の重要なポイントになるケースもあります。

 離婚を考え出すタイミングは人それぞれです。事情によっては悠長に生活設計を考えている場合ではないこともあると思いますし、理想の流れが分かってもその通りに動くのが難しいケースもあります。

 ただ、特にお子様がいる場合には、ある程度先まで生活設計を考えられると、かなりの不安が軽減されるのではないかと思います。仮に、理想の生活設計を実現できないとしても、リスクが分からないまま進めるのと、リスクは分かった上で進めるのとでは、リスクが現実化した時の対応に大きな違いが出てくるものです。

 ご相談にいらしていただいた場合は、もちろん、一緒に検討させていただきますので、ご相談ください