コラム

面会交流 裁判例

面会交流の強制執行

弁護士 長島功

 審判や調停で面会に関する判断や合意があるにもかかわらず、それが実現されない場合の強制執行について、今回は解説します。
 このような場合、以前のコラムで解説した履行勧告という制度を使うことも検討されますが、強制をすることができないため、それで実現されない場合は、最終的には強制執行を考えなければなりません。
 強制執行には、直接強制と間接強制があり、直接強制はその名前のとおり、義務の内容を直接、強制的に実現するもので、典型的には、お金に関する債務で使われるものです。しかし、面会交流の場合には残念ながら無理やり執行官を使って面会交流を実現することはできません。このような面会交流は子の福祉に反することは明らかで、そのような手段で実施することは非現実的と言わざるを得ません。
 では、間接強制はどうでしょうか。
 この間接強制というのは、面会交流が実現されない間、一定の金額を支払わせることで、面会交流を間接的に強制する方法です。債務者としては、面会交流に応じなければお金を支払わなければならないため、面会交流に応じる動機が出て、面会交流が実現するというものです。
 もっとも、常にこの間接強制ができるわけではありません。
 この点について判例は、「面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡し方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合」に、間接強制ができると判断しています。
 したがって、月に1回「程度」、時間も「半日程度」などとされていたり、どこでどのように子を引渡すのかがはっきり決まっていなかったりすると、残念ながら間接強制をすることはできません。
 その場合には、改めて面会交流の調停を申し立てた上で、内容を特定した合意を目指すといった対応が必要となります。