コラム

婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について㉑~婚姻費用分担額決定までの流れ(11)調停~

弁護士 小島梓

 前回まで、調停が成立する場合についてご説明してきました。
 今回は、婚姻費用分担調停が不成立になるというのは具体的にどういうことなのかについて、ご説明したいと思います。
 調停の期日に双方で話し合いをしても、双方が納得できる金額が出てこない場合、合意はできません。この場合裁判所は、調停を不成立として終了させる手続きをとります。

 裁判所が不成立の手続きをとる判断をする基準として、〇回目までに合意できなければ不成立というような明確なルールはないと考えられています。裁判所の内部では何か基準が設けられている可能性がありますが、少なくとも利用者に公開されているルールはありません。
 通常のシンプルなケースでは、3,4回期日を重ねても全く金額について合意できる気配がないと、裁判所から次回合意できなければ不成立にしたいと思いますという話が出てくるというイメージを持っていただければと思います。
 ただ、当事者の一方が複数箇所より収入を得ている可能性があるが本人が開示をしない、子供が私立の学校に行っていて高額の費用がかかるというように、複雑な事情がある場合には、調停段階から、双方、書面による主張を求められることもあり、その場合は、不成立という判断が出るまでに半年から1年程度かかるケースもあります。

 基本的に裁判所は、婚姻費用分担請求の調停については、成立にしろ不成立にしろ早めに結論を出すことを目指しています。なぜなら、婚姻費用は、支払いを受ける権利者側の家族にとって大切な生活費であり、払われない場合には生活が立ち行かないという事態になりかねないためです。
 成立すればそれで金額が決まるので良いのですが、不成立となりますと、調停では金額が決まらずに終了となります。この後はどのような手続きになるのでしょうか。

 次回は、婚姻費用分担調停が不成立となって終了した後の手続きについてご紹介します。