コラム

婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について⑮~婚姻費用分担額決定までの流れ(5)~

弁護士 小島梓

 前回のコラムにおいて、弁護士への相談の必要性やメリットをご紹介しました。
 今回は、弁護士に相談した結果、本人同士の話し合いは切り上げて、次のステップに進むということになった場合に取りうる手段の一つ、相手方への内容証明郵便による婚姻費用分担金の請求についてご説明します。

 ご本人同士の話し合いで、婚姻費用の支払いが開始されない場合には、最後は、婚姻費用分担調停によって金額を決めることになる可能性を踏まえて動いていく必要があります。

 繰り返しになりますが、「婚姻費用分担請求について③~婚姻費用分担の始期~」で詳細をご説明しましたとおり、裁判手続きをとったときに、婚姻費用の発生が認められるのは、原則として内容証明郵便にて相手方に請求した時か婚姻費用分担調停を申し立てたときになります。そうすると早急に内容証明郵便にて相手方に請求をするか、婚姻費用分担調停を申し立てるかということを検討することになります。

 まず、弁護士名での内容証明郵便により事態が動くことがあり得ます。通常の方は弁護士より書面が送られてきますと真剣に取り組まざるを得ないと考える傾向にあるためです。
 ですので、相手方の性格や状況によっては調停まで申し立てずにまずは内容証明郵便を送付して、弁護士による協議をおこないつつ、様子を見ることに価値がある場合があります。

 さらに、最終的には婚姻費用分担調停を申し立てることを想定して動く場合も取り急ぎ、内容証明郵便にて相手方に通知を出しておく意味があるケースがあります。
 次回から婚姻費用分担調停についての説明を進めていきますが、当該調停については申立時に求められる資料もありますし、作成すべき書類もあります。そのため、一夕一朝にできることではなく、事案によっては、申立まで時間を要する場合もあります。そこで、調停申立てまでの時間をカバーするために取り急ぎ内容証明郵便を発送しておいて、その間に申し立ての準備を進めるという方法をとることになります。

 このように、内容証明郵便は裁判手続きにおいて重要な証拠となりうる反面、比較的簡易な手段と言えます。使いみちは様々です。弁護士に相談し、それぞれの事案に合わせて有効に活用することをお勧めします。

 次回からは、婚姻費用分担調停について説明を進めていきます。