コラム

裁判例 婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について④~婚姻費用分担の終期~

弁護士 小島梓

 前回は、婚姻費用分担の始期についてご説明しました。逆に婚姻費用分担の終期はいつになるのでしょうか。

 「婚姻費用分担請求について②~婚姻費用(生活費)分担義務の根拠~」でご説明した通り、婚姻費用分担義務は婚姻という法律関係から生じるものですので、婚姻関係の解消がその分担義務の終期ということになります。

 すなわち離婚が成立した場合には、婚姻費用分担義務はなくなります。

 さらに、通常、婚姻費用分担金は別居状態の夫婦の間で、別居状態であることを前提として取り決められることになります。

 そのため、別居していた夫もしくは妻が自宅に戻って再び同居状態になったときには、基本的に取り決められた金額の支払いについても必要なくなると考えられており、裁判所にて婚姻費用分担について取り決めを行う場合は、通常、「離婚若しくは別居状態が解消された時」が終期として定められます。

 ただし、妻に婚姻費用を支払いたくないというだけの理由で別居先から夫が自宅に戻り起居を始めたというケースでは、夫の行動が信義則に反するという理由で、別居状態の解消とは認められず、婚姻費用分担義務も消滅しないという判断も出ています(名古屋家庭裁判所岡崎支部平成23年10月27日付判決)。
 別居状態が解消されたと言えるか否かは実態も踏まえて判断されるということになります。

 次回は、婚姻費用の内容についてご説明します。