不貞相手との同居は「監護者指定」にどう影響するか?
弁護士 幡野真弥
離婚や別居に際して、お子さんの「監護者(どちらが育てるか)」をめぐる争いは非常に重要な問題です。一般的には「継続性の原則(それまでメインで育ててきた親が優先される)」が重視される傾向にありますが、東京高裁令和7年3月4日決定は、その原則を覆し、母親側の監護状況を「不適切」と厳しく断じました。
1. 事案の概要
まずは、本件の経緯を時系列で整理します。
- 家族構成: 平成30年に婚姻。長女と長男の2人の子が誕生。
- 監護の状況: もともとは妻が主として育児を担っていた。
- 不貞の発覚: 妻が不貞相手との交際を開始。自宅に不貞相手を招き入れたり、子を連れて外出したりするようになる。
- 別居: 令和6年2月、妻が子を連れて別居。当初は実家にいたが、約4か月半後には不貞相手との同居を開始した。
この状況に対し、父親(夫)が「子の監護者指定」と「引渡し」を求めて審判を申し立てました。
2. 裁判所の判断
裁判所は、それまで主たる監護者であった妻側の主張を退けました。
裁判所は、「抗告人は,本件相手と不貞関係になった後は,未成年者らが居住する同居時自宅に本件相手が立ち入ることを容認し,あるいは,未成年者らを連れて本件相手と外出するなどし,未成年者らをして抗告人が配偶者である相手方以外の男性と親密に交際している状況に直面させたほか,本件相手をその自宅に送るため,夜間であるにもかかわらず,未成年者らを同行させるなどしていたのであって(略),そのような抗告人による監護は未成年者らの福祉に反する不適切なものというべきである」と厳しく指摘し、
「抗告人の現在の監護状況に関してみると,抗告人は,相手方との別居の約 4 か月半後に本件相手と同居し(略),未成年者らを本件相手と日常的に接する状態に置き,未成年者らと相手方との面会交流が実施されていない状態で,未成年者らが本件相手を「パパ」と呼ぶことを容認している(略)というのであって,そのような監護状況は,未成年者らと相手方との正常な父子関係の維持,形成を妨げる不適切なものであるから,これを継続させることは,未成年者らの福祉に反するものというほかない。」と判断し、結論として、同居時における子らの主たる監護者は妻であったものの、妻が不貞関係になってからの監護には不適切な点があり、現在の監護状況も子の福祉に反する不適切なものでこれを継続させることは相当ではないとして、子らの監護者はいずれも夫と指定するのが相当と判断しました。
3. まとめ
監護者指定において最も優先されるのは、あくまで「子の福祉」です。不貞相手との同居や、実の親との面会交流が実施されていない状態で、不貞相手を「パパ」と呼ぶことを容認するような行為は、裁判所から「子の福祉に反している」とネガティブに評価されるリスクが極めて高いと言えます。
