コラム

離婚訴訟 離婚原因 裁判例

夫の暴力と妻の不貞のどちらが離婚原因か争点になった裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成30年 2月 8日判決をご紹介します。
 被告と協議離婚した原告が、離婚の原因は被告の不貞行為にあるとして、不法行為による損害賠償を求めた(本訴)のに対し、被告が、離婚は原告の暴力が原因であるとして不法行為による損害賠償を求めた(反訴)事案です。

 裁判所は、以下のように判断しました。

・被告は、長男出産直後、出会い系サイトに登録し知り合ったCと金をもらって性交渉に及び、その際、長男をホテルに連れて行き避妊もしていなかったなど、被告の不貞(売春)が夫婦関係の破綻原因となったことは否定できない

・一方、原告も、被告と口喧嘩になり被告が家から出て行こうとするのを押し止めるため被告の身体を押さえ付けたり髪の毛を掴んだりすることがよくあるなど、原告の暴力も夫婦関係の破綻原因となったことは否定できない

・上記経緯等に鑑みると,夫婦関係の破綻が専ら,被告の不貞(売春)によるものか,原告の暴力によるものかは明らかとはいえない。そうすると,原被告が離婚を余儀なくされたことにつき,原,被告のいずれについても不法行為は成立しない。