コラム

裁判例 慰謝料

婚姻期間3年で、不貞相手から慰謝料150万円の弁済があった事案で、更に夫に対して慰謝料150万円の支払いが命じられた裁判例

弁護士 幡野真弥

 今回は、東京地裁平成31年 1月25日判決をご紹介します。
 夫婦の結婚期間は約3年で、既に協議離婚が成立済みでした。
 妻は、離婚成立後、夫の不貞相手に対して慰謝料請求訴訟を提起し、慰謝料150万円の支払いが命じられ、既に支払い済みでした。
 そして、妻は、夫に対して、不貞等を原因に慰謝料請求訴訟を提起しました。

 裁判所は「原告は,A訴訟により,原告とAとの不貞行為によって生じた精神的損害について賠償を受けたとはいえ,婚姻期間中の原告と被告Y1の置かれた環境はほぼ同じでありながら,平成24年6月の婚姻後,原告は医学生として自ら勉学に励む傍ら,被告Y1との婚姻に伴う家事や雑務の多くを負担し,医師国家試験の合格から研修医としての入職や福井市から千葉県鴨川市への転居に伴う負担を乗り越え,被告Y1の親族(主に被告Y2)との関係に苦慮しながらも,被告Y1との婚姻関係を維持しようと努力してきたことに鑑みれば,被告Y1の不貞行為によって離婚を余儀なくされた精神的苦痛は,不貞行為のみに関するA訴訟による賠償ではいまだ慰謝されていないというべきであるが,被告Y1が原告に対し抱えていた不満の内容をみると,夫婦関係の不和について,すべて被告Y1の行為が原因であるとまではいえないこと,婚姻期間は約3年であったことなども加味し,その損害額は150万円とするのが相当である。」と判断しました。

 婚姻期間が3年であり、既に不貞相手から150万円の慰謝料が支払い済みであるにもかかわらず、追加で夫に対して150万円の慰謝料の支払いを命じることは、裁判例に照らすと高額な印象です。夫が不貞の事実を否定したことが影響しているのかもしれません。