コラム

離婚原因

離婚原因としての悪意の遺棄

弁護士 長島功

 民法770条1項2号では、「悪意の遺棄」が離婚原因として挙げられています。
 悪意とは、法律用語ではある事実を知っているということを意味する場合が多いですが、ここでいう悪意というのは、日常用語としての悪意に近く、新潟地裁昭和36年4月24日は、社会的倫理的非難に値する要素を含むものであって、積極的に婚姻共同生活の継続を廃絶するという遺棄の結果たる害悪の発生を企図し、もしくはこれを容認する意思をいうとしています。
 このように、単に放置されたという程度では、この「悪意の遺棄」に該当するとは判断されにくいです。実際の裁判例でもこの悪意の遺棄が認められるケースというのは、それなりの悪質性をもったものに限られています。そのため、数としてもそれ程多くはありません。

 では、具体的にはどのような場合に悪意の遺棄が認められ、どのようなケースではそれが否定されるのでしょうか。
 認められたケースとしては、以前のコラムでも少し触れましたが、半身不随の妻を放置し、しかも生活費を渡さないで長期間別居したようなケースが挙げられます。また、外国籍をもつ夫が家を出て音信不通となり、残された家族が生活保護を受けている事案(名古屋地裁昭和49年4月16日)、借金の取り立てに苦しんでいた夫が、妻を置いて音信不通となり、消息を絶ち、生活費等の送付も一切しないという事案(名古屋地裁昭和49年10月1日)で悪意の遺棄を認めています。
 一方で、夫によるDVから逃れるために妻が家を出た事案や(東京地裁平成10年1月30日)、浮気を繰り返す夫に反省を促すために妻が家を出た事案では(長野地裁昭和38年7月5日)、正当な理由が認められますし、社会的倫理的な非難に値する要素は含まれていないため、悪意の遺棄とはいえないと判断されます。
 なお、悪意の遺棄に該当しないとしても、その後別居が長期間続いたりするなどすれば、5号の婚姻を継続し難い重大な事由に該当してくる可能性はあります。

 このように家を出た理由やその期間、残された家族の状態や別居中のやり取りの有無・内容などを総合的にみて、一定の悪質なものだけが離婚原因としての「悪意の遺棄」に該当することになります。