コラム

離婚訴訟 裁判例 慰謝料

モラハラ・DVと慰謝料についての裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京家庭裁判所立川支部令和 3年 9月17日判決をご紹介します。
 原告(夫)が被告(妻)に対して、離婚等を求めた裁判例です。
 裁判のなかで、モラハラ・DVと慰謝料について争点になりました。
 裁判所は、以下の事実を認めました。
・原告は、被告に対し、長男の態度が気に入らなかったため、謝罪を求め、これに応じて頭を下げて謝罪をしている被告の頬から後頭部付近を平手で殴打する暴行を加えた。
・原告は、この時以外にも、被告に対し、頭を下げて謝罪するよう求めたり、これに応じてすみませんと述べる被告に対し、まだ違う、まだ態度が悪いなどと述べ、土下座をさせることもあった。
・原告は、被告及び子ら、被告の姉夫婦とともに、公園に行って飲酒し、その帰宅時、食事場所の希望が自身と異なった長男に立腹し、被告の胸倉を掴み、それを制止しようとした長女の帽子を叩き飛ばし、長男の髪を引っ張る暴力を加えた。
・原告は、被告及び子らとともに自宅で夕食を採っていたところ、長男の態度が気に障り不機嫌となって、テーブルを挟んで向かい合って着席していた被告に対し、お前の教育が悪い、顔を出せと述べ、これに応じて原告の方に頭(顔)を出した被告の頬から後頭部付近を平手で殴打する暴行を加え、さらに、被告に対し、出て行けなどと述べた。
・原告は、被告に対し、長男の態度をめぐって、母親に洗脳されているからこういう態度を取るんだ、出て行けなどと述べた。また、原告は、長男が食事をあまり食べない時に、長男に対し、女々しい、女の腐ったような奴だなどと言い、被告に対しても、こうなったのもお前のせいだなどと言って説教をすることがあった。
・原告は、リビングで居眠りをしていたところ、長男から、もういい加減下(寝室)に行けよなどと言われたことに激怒し、ここは俺の家だ、誰のおかげで生きていられると思ってるんだ、俺に逆らうならこの家から出て行けなどと述べた。これに対し、長男が、それって死ねってこと?などと述べたところ、原告は、死ぬっていうのはこういうことだなどと述べながら、長男の背後から、ヘッドロックのような形でその首を絞めた。
・原告は、リビングでくつろいでいた長男に対し、一緒にテレビを観ようと言ったところ、長男から、別に俺は見たくない、うざいなどと言われたことに激怒して口論となり、長男は、家を出て、翌日未明まで帰宅しなかった。なお、長男は、これまでにも、原告から怒鳴るなどされた際、部屋に逃げ隠れる、謝る、土下座するなどしていた。

 このような事案で、裁判所は、被告が被った精神的苦痛を慰謝するには150万円が相当だと判断しました。