コラム

婚姻費用分担金

婚姻費用分担請求について㉕~婚姻費用分担額決定までの流れ(15)審判~

弁護士 小島梓

 今回は婚姻費用分担請求の調停が不成立となり、審判手続きに移行し、裁判官による判断、すなわち「審判」が出た後の流れについてご説明していきます。

 例えば、婚姻費用として夫は妻に対して月額10万円を支払うように命じる内容の審判が出されたとします。しかし、これに対して、妻が少なすぎる(もしくは夫が多すぎる)と不満を持つケースもあります。
 その場合、審判に対しては、不服申し立てをすることができます。「即時抗告」と言われる手続です。
 調停とは異なり、あくまで裁判官が出す結論ですので、当事者間が納得している前提で出される結論ではありません。そのため、結論に対して不服がある場合には、さらに上位の裁判所に判断を求める手続きが用意されています。

 即時抗告が行えるのは、審判書を受領してから2週間ということになっており、非常に期間が短いです。早急に代理人と相談するなりして、即時抗告をするか否か結論を出す必要があります。
 そして、当事者のいずれかがこの即時抗告手続きをとった場合は、審判は確定しません。すなわち、審判の内容に従った支払いがなされないとしても強制執行などができる状態にはならないということです。この点が即時抗告の大きな効果の一つです。

 とはいえ、即時抗告さえしておけば、永遠に何も決まらないということではありません。即時抗告をして上位の裁判所で争った後、さらにもう一度不服申し立てをする機会もありますが、いずれは裁判所の判断が確定するという段階が来ます。

 そのため、見通しも立てずに、ただ、結論を先延ばしにしたいというだけの理由で即時抗告等の不服申し立てを行っても、結論は何も変わらず、時間と費用が無駄にかかっただけという結果になりかねません。
 即時抗告については、期間制限があったり、要件や内容については、ルールもあります。上記のように、お金も時間もかかることですので、見通しもしっかりと立ててから行う必要があります。

 基本的には、一度弁護士と相談してから、即時抗告を行うか否か決めることをお勧めします。