コラム

養育費 裁判例

再婚と養育費について

弁護士 幡野真弥

 親権者が子どもを連れて再婚したとしても、子どもと再婚相手との間で親子関係が当然に発生するわけではありません。そのため、離婚後、子どもの親権者が再婚をしても、親権者とならなかった実親に養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。
 そして、親権者の再婚相手と子どもが養子縁組をした場合には、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が発生します。養子縁組をしても、実親が親でなくなるわけではありませんので、扶養義務が消滅するわけではありませんが、養親の扶養義務は実親の扶養義務に優先し、実親は養育費の支払いを減免されると考えられています。
 ただし、再婚相手の養親が無資力である場合や、実親の収入に余裕がある場合は、実親が扶養義務を負うこともあります。

 実親が、養子縁組の事実を知りながら、養育費の支払いを続けるケースもあります。この場合の婚姻費用については、どのように計算するのでしょうか。
 大阪高裁平30年10月11日決定は、妻が再婚し、連れ子と再婚相手は養子縁組をしましたが、別居し、再婚相手に婚姻費用の分担を求めた事例です。連れ子の実の父親は養育費の支払いを続けていました。
 裁判所は、この事件で、いわゆる標準的算定方式を参考に婚姻費用分担金の額を試算した上で、子の実父から支払われた養育費については、この試算額にもとづく未払婚姻費用分担金から、養育費の既払い分を控除しました。