コラム

離婚の方法 協議離婚

離婚の方法⑥~公正証書について(協議離婚)~

弁護士 小島梓

 協議離婚成立時に書面作成が重要であること(離婚の方法④~書面作成の必要性(協議離婚)~),さらに,前回のコラムにおいて,その書面の形の一つである「離婚協議書」についてご説明しました(離婚の方法⑤~離婚協議書の作成(協議離婚)~)。今回は,もう一つの書面の形式「公正証書」についてご説明していきたいと思います。

(1)公正証書とは
 皆様,公正証書という言葉はお聞きになったことがあろうかと思います。
 公正証書とは,「私人(個人又は会社その他の法人)からの嘱託により,公証人がその権限に基づいて作成する文書」のことです。これは,公証人が提供する法律サービスの一環になります。公証人のサービス内容については法務省の「公証制度について」のページも一度ご覧になってみてください。

(2)協議離婚における重要性
 それでは,次に協議離婚において,公正証書を作成することがなぜ重要になるのかについてご説明していきたいと思います。

 離婚の条件について双方の合意内容をまとめた「離婚協議書」や「合意書」等の書面と公証人によって作成してもらう「公正証書」とは大きく異なる点があります。

 例えば,当事者間で作成した「離婚協議書」に養育費について,元夫Aから元妻Bに対して,月額5万円払うという取り決めがあったとします。残念ながら,途中でこの支払いが滞る事態になることがあります。

 そうなってしまったとき,「離婚協議書」が作成してあるのみですと,Aの財産や給与を差し押さえたりして回収することはできません。基本的にはただ催促をするということになります。

 他方で,公正証書を作成しており,同内容の取り決めがなされている場合には,裁判所を利用してAの給与や財産を差し押さえることで,強制的に回収することが可能になります。

 これを法的には強制執行と言います。

 以上のように公正証書は取り決められた内容について守られなかった時に,強制執行が可能となるという大きなメリットがあるため,非常に重要と言えます。

 次回は,公正証書の作成に適しているケース,公正証書の実際の作成方法についてご紹介したいと思います。